松山ブンカ・ラボ

INTERVIEW

まつやま文化人録

  • VOL.002
  • 2019.12.03 UP
山内知江子 さん
山内知江子 チェコアニメ作家/美術作家
「わからないなりに触れる機会がないと見る目は養われないと思うんですよね。」

パフォーマンスユニットHanbun.coでの活動も旺盛なチェコアニメ作家・美術作家の山内知江子さん。道後オンセンナート2018の地元プロジェクトとして道後放生園に投影されたアニメーション作品『花鳥図屏風』『八百万』も記憶に新しいところです。松山を拠点に創作活動をする山内さんにご自身について、松山のアートシーンについてお話を伺いました。


  • 分野を越境する感覚

    高校生のときは美術部に入っていました。本当は弓道部に入りたかったんですが(笑)。その頃はパラパラ漫画くらいは描いていましたけど映像制作とかは全然やっていませんでした。大学は武蔵野美術大学のデザイン学科に入りましたが、学科ではなくてサークルでアニメーションを制作していました。卒業後、一年間準備をしてチェコに留学します。チェコはイギリスやロシアなどと並んで人形劇から派生したアニメーションが盛んです。伝統的な人形劇を国が積極的に支援していて、国立の学校のなかに人形劇やアニメーションを学べる学科があるんです。大学院ではアニメーションと人形劇の両方を学んでいました。オルタナティブ人形劇学科というところで、いまもってオルタナティブってなんだかわからないんですが(笑)、分野を越境する感覚はチェコで自然に身に付けましたね。大学院には楽器も弾けないといけないしダンスもできないといけないような生身の人間として舞台に立てる役者たちが人形劇をやっているんです。そういう人たちと作品をつくりました。アニメは二次元だから、生身の人間を介在させることで三次元に近づけたいという意識はもっています。そうすると次元が増えるというか、多層性が帯びてくるというか。
    「菊花の約日本公演」2007年10月上演。上田秋成「雨月物語」の一遍「菊花の約」をベースにした、アニメーションとの融合の人形劇パフォーマンスであるオブジェクトシアター。

  • パフォーマンスユニットHanbun.co

    帰国したのが2007年です。プラハからダイレクトに松山に戻ってきました。そして大学院の卒業制作でつくった作品をチェコの役者と共に松山で上演しました[i]。その頃、NPO法人クオリティアンドコミュニケーションオブアーツ(カコア)からyummydanceというダンスカンパニーと一緒に作品をつくらないかと誘われました。パフォーマンスユニットHanbun.coを共にするダンサー/振付家の得居幸との出会いはそれがきっかけで、一緒につくろうかということになりました。Hanbun.coは来年結成10周年を迎えます。最近は「コマ撮りワークショップ」が評判で助成金もいただけたりするのでたくさんやっていますが、Hanbun.coはパフォーマンス上演を前提とした作品づくりが中心で、例えばダンサーの掌にアニメーションを投影させたりとか、かなり凝ったことをやってきています。

    [i] シアターネットワークえひめ(シアターねこ)の鈴木美恵子さんはこの時の作品を観て山内さんに一目惚れし2018年の道後アート地元プロジェクトを依頼することに繋がったという。
    Hanbun.coの処女作「やぎさんゆうびん」2011年5月初演。アニメーションとコンテンポラリーダンスがミリ単位で緻密に融合したパフォーマンス。

  • わからないけど面白い

    私がチェコから帰国する前の話で聞いたことがあるんですが、愛媛県立美術館で現代美術の展覧会をやったときに市民から苦情があったそうです。それ以来、県立美術館では現代美術はあまりやっていないような。松山は現代的な表現を市民がなかなか受け容れてくれない状況にあります。なぜかと言うと「わからないもの」を観る体験をしてきていないからだと思います。Hanbun.coでは観る人に想像できる余白をつくります。100人いたら100人が同じイメージを持つものではなくて、100人それぞれ違う感想を持って帰ってもらえればよいんです。例えば高知は、高知県立美術館がとても頑張って発信性の高いことをしているから文化レベルが高いですね。やはり公立の文化施設や美術館の役割はとても大切だと思います。そういうところが責任を持って底上げをしてもらわないと「わかんない」と言われて終わってしまう。わからないなりに触れる機会がないと見る目は養われないと思うんですよね。東京とか都会から有名な人を呼んで一瞬で終わってしまうようなことではないやり方が必要です。それでは東京にお金が流れていくだけじゃないですか。

(取材:2019年7月5日)

山内知江子 チェコアニメ作家/美術作家

武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業後、単身渡チェコ。2002年、プラハ国立芸術アカデミー映画学部3F-Program Cinema Studies アニメーション専攻修了。2006年、プラハ国立芸術アカデミー演劇学部オルタナティブ人形劇学科舞台美術科大学院修了。Břetislav Pojar、Petr Matásekに師事。帰国後、舞台美術/映像/アニメーション/グラフィックデザインなど多数の作品を提供、単独上演等を行う。高知県立美術館でのアニメーションワークショップや松山デザイン専門学校講師など後進の指導にもあたる。2010年、ダンサー /振付家の得居幸とダンスとアニメーションのパフォーマンスユニットHanbun.coを結成。

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    NPO法人シアターネットワークえひめ