松山ブンカ・ラボ

JOURNAL

特集記事

2022.04.12 UP
VOL.
030
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あなたのアイディアを応援します~文化サポートプログラム“らぼこらぼ”レポート

戸舘正史(松山ブンカ・ラボ ディレクター)

  • 中間支援としての〈らぼこらぼ〉~共に悩み、考え、対話を重ねる

    2022年4月より〈らぼこらぼ第2期〉の募集がスタートします。〈らぼこらぼ〉は、文化・表現活動に関わる企画を公募し、採択された団体と松山ブンカ・ラボが協働で企画を実施していく文化活動支援事業です。

    松山ブンカ・ラボは中間支援組織です。ここで言う中間支援とは、例えばある社会的課題やテーマに取り組みたい市民やアーティスト(アーティストも市民ですが)と課題の解決や取り組みの実現のための具体的な方法を結び付けていくサポートのことです。サポートの形はいろいろあります。活動の意義を説明するための言葉を作ったり、その取り組みを届けたい人たちを一緒に探したり、あるいは届きやすいように内容をアレンジしたり、時には「この人と一緒にやってみたらどうでしょう?」とマッチングを提案したり、実に様々です。一番大切なことは、一緒に当事者意識を持って、自分事として共に悩み、考え、対話を重ねていくことだと松山ブンカ・ラボは考えています。このように〈文化サポートプログラム“らぼこらぼ〉は補助金事業ではなく、市民の企画提案を松山ブンカ・ラボが可能な限りより良いものにして共に催していく事業(共催事業)なのです。

    〈らぼこらぼ第1期〉がスタートしたのは松山ブンカ・ラボが始まって2年目2019年度のこと。企画を募集し、選考を経て、5つのパートナー団体(と企画)が決定したのは2020年春でした。コロナ禍のなか2年をかけて、5つの企画は松山ブンカ・ラボと共に内容をブラッシュアップしたうえで実施されました。本稿では〈らぼこらぼ第2期〉募集スタートにあたって、第1期5団体の活動をご紹介します。

  • 〈小さな美術教室を行き来する廊下のようなオンラインネットワーク〉(土山あやか)

    松山市内で子どもを対象とした美術教室を運営している土山あやかさんは当初、公園で大人も子どもも絵の具だらけになりながら大きな絵を描く“アクションペインティング”の企画を提案しました。その後の対話の中で、土山さんは、子どもも大人も自由に表現する場を作ることや、そのための方法論を模索していること、また他の美術教室がどんなことをしているのか知りたいということなど、さまざまな問題意識が明らかになっていきました。そして、それらの問題意識や興味をより長いスパンで考えていくことのできる場を作っていく内容に企画は変容していきます。結果的に札幌在住の美術家の深澤孝史さんとのマッチングによって、市内外の美術教室のやっていること、方法論、課題を共有していく長期的なプログラムをオンラインで実施することになりました。全国各地(海外の方も)から約10名が常時参加し、それぞれの教室で実施していることを“覗き見”したり、同じ材料や方法を用いた創作をしたりすることによって、小さなコミュニティが誕生しました。

    企画:土山あやか(子ども造形アトリエnekko)
    ファシリテーター:深澤孝史(美術家)
    実施期間:2021年4月~10月(全10回)
    参加者数:10名

  • 〈ヤミーダンスの『おっと!その動きいただきます』〉(yummydance)

    松山を拠点に内外で活躍するダンスカンパニーyummydance(宇都宮忍、合田緑、高橋砂織、得居幸)は、2020年に結成20年を迎えました。20年前に松山市及び現・松山市文化・スポーツ振興財団(当時・松山市生涯学習振興財団)が実施したダンス事業によってドイツから招聘された振付家のアマンダ・ミラーの薫陶を得て誕生したyummydanceのメンバーたちは、かつて若い自分たちがチャンスを得たように、現在の若いダンサーたちを育成するための企画を提案しました。互いに作品を批評する過程を経て作品、表現をブラッシュアップしていく“ワーク・イン・プログレス”(作品の創作の過程の進行そのものを見せていく)のような意欲的な企画は、接触や一堂に会すことが避けられる社会状況下において実現することはできませんでした。替わりに、身体的な接触を避けながらも、他者との関係性を築きながらダンスという表現に落とし込んでいくことが検討されました。そして生まれたのが〈おっと!その動きをいただきます〉です。日常のさりげない、なんでもない動き、所作の一瞬を切り取った動画を募集し、それらを素材としてyummydanceが作品にするプロジェクトです。このプロジェクトでは2つの作品が生まれました。ひとつはyummydanceの20周年記念公演『グッドバイ』のなかの小作品として、もうひとつは映像作品『何でできてるのでしょーか?』として結実しました。映像作品は現在配信中です。

    企画 yummydance(宇都宮忍、合田緑、高橋砂織、得居幸)
    動画応募数:17 点
    映像作品『何でできてるのでしょーか?』

  • 〈演劇をもっと楽しむための戯曲リーディングワークショップ〉(SCHOP PROJECT/代表:高山力造)

    俳優・演出家の高山力造さんは、東温市地域おこし協力隊として東温アートヴィレッジセンターでさまざまな企画や活動をおこなってきました。現在は県内外の劇団に俳優として客演するほか、東温市に限らず松山市を中心にSCHOP PROJECT名義による創作活動やワークショップをおこなっています。決して演劇文化あるいは劇場文化が活況を示しているとは言い難い松山において、高山さんはまずは俳優の能力、技術の底上げが課題と考えていました。よって当初提案された企画においても俳優の育成というところに焦点が絞られていましたが、演劇の愉しみや演劇という表現の特性に着目し、より広く市民を対象とした古典戯曲のリーディングワークショップを実施することになりました。ひとりで読みこなすことが難しい古典戯曲をみんなで声を出して読み、登場人物の心理を読み解き、お互いの考え、解釈を共有していく現場は、演劇的な創作の場というよりも、戯曲を媒介とした他者同士が出会い対話する場として機能していました。題材となったチェーホフ『桜の園』は、参加者の意欲が高いこともあって、最終的にはリーディング上演の枠に収まらない本格的な上演発表となりました。

    企画:SCHOP PROJECT(舞台芸術プロジェクト)
    ファシリテーター:高山力造(演出家、俳優)
    実施期間:10月5日~11月14日(全8回)
    参加者:17名

  • 〈愛媛・演劇の21世紀 チラシアーカイブ2000‐2021 中予編〉(めぐりて/代表:秦元樹)

    秦元樹さんは10年近くの間、松山に限らず四国中の演劇情報を収集し発信していくサイト(カンゲキ☆あんない)を運営してきています。またさまざまな劇団の制作、県外からの劇団公演の受け入れなど、いち市民として松山、いや四国を代表するオーガナイザーとして活躍するほか、演劇を鑑賞する文化を地域に根付かせるための活動にも積極的で、鑑賞した演劇について語り合う茶話会の主宰もされています。当初提案された企画は茶話会を拡張し、よりオープンな演劇愛好家のコミュニティ作りを目的としたものでした。しかし既に手の届く範囲ながら地道に小さなコミュニティをオーガナイズされていることもあり、松山ブンカ・ラボは秦さんだからこそ可能な企画を提案しました。秦さんだから可能なこととは何か。それは膨大なデータベースです用いるということです。それらを活用して、ある時代における松山の演劇文化を可視化することは秦さんではなければ不可能であり、いまやるべき有意義な企画であるという結論に達しました。企画は2021年7月にオープンした市民運営のアートスペース〈PAAC平和通りアートセンター〉にて開催され、松山の演劇レジェンドをゲストに招いたトークイベントも実施されました。

    企画:めぐりて(文化芸術の観客の集い)
    会期:12 月15 日(水)~1 月16 日(日)来場者:133 名

    関連企画
    ・12月16 日(木)「『人力飛行機ソロモン松山篇』寺山修司の市街劇」
    ゲスト:杉浦みゆき、泰山咲美(人力飛行機ソロモン松山篇出演)

    ・12 月21 日(火)「新旧・愛媛の演劇情報サイトの人たち」
    ゲスト:浜口慶夫(グッピーの焼劇のページ)、泰元樹(カンゲキ☆あんない)

    ・1 月6 日(木)「テント芝居、全国巡る旅一座の日々」
    ゲスト:2B(元テント芝居 劇団どくんご 役者)

    ・延期 1 月11 日(火)「劇団、俳優養成所、市民演劇・・愛媛で続ける演劇活動」
    ゲスト:桝形浩人(劇団P.S みそ汁定食、(有)まつやまアーツマネジメント)

    ・延期 1 月13 日(木)「東温のアートのこと、愛媛に移住してからのこと」
    ゲスト:高山力造(SCHOP PROJECT、元東温市地域おこし協力隊)、田中直樹(東温市地域おこし協力隊)

    ・延期 1月14日(金)まつやま演劇人サミット

  • 〈子どもワークショップ「伊予源之丞 人形浄瑠璃であそぼう」〉(伊予源之丞保存会/代表:岡田正志)

    伊予源之丞保存会は三津で明治時代から続く人形浄瑠璃を受け継ぐ市民有志の団体です。次代の担い手不足が団体の切実な課題です。松山ブンカ・ラボが大学の機関であることもあって、代表の岡田正志さんは大学生向けの講座やワークショップなどの企画を提案しました。しかし大学生は卒業後必ずしも松山で暮らすわけではなく、大学生を人形浄瑠璃という伝統芸能に引き込むこともまた決して容易ではありません。そこでまずは小学生などを対象に子どもたちが遊ぶようにして人形浄瑠璃の存在を知る機会作りから始めることを検討することになりました。こうしたプログラム作りのノウハウを持っていない保存会に伴走しアドバイスをする立場として、俳優・演出家の有門正太郎さんに関わってもらうことにしました。演劇的手法を用いたワークショップを数多く行ってきた有門さんが伊予源之丞保存会と協働することによって、人形浄瑠璃あるいは人形遣いを媒介としながら、遊びながら想像力を養うワークショップ実施の準備が始まりました。ここでは伝統芸能を表現活動として普遍化し、日常生活と接続するツールとして位置づけることが目指されました。しかし予定していたワークショップは感染者数が増加するタイミングと重なり、二度中止(延期)となってしまいます。有門さんは保存会のメンバー向けにワークショップを実施するなど準備を重ね、今夏に予定している延期開催に備えてるところです。

     

    企画:伊予源之丞保存会(人形浄瑠璃)
    ファシリテーター:有門正太郎(俳優、演出家)
    ※2022年8月に開催予定

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