松山市文化創造支援協議会

JOURNAL

特集記事

2022.11.22 UP
VOL.
034
column
おとなが自分と向き合う場~こどもの表現を考えるラボ

阿比留ひろみ(アートコーディネーター)

  • 自分にとっての「表現」を探すための時間

    2019年に全2回の講座としてとしてはじまった本企画。新型コロナで2020年はお休みとなったが、2021年より、月に1度のペースで、こどもの表現活動やこどもが中心にいる場づくりに関心のある人を対象とした集いがはじまった。


    (2019年の様子)

    2021年は、主に有門正太郎さんのワークショップを実際に体験してもらうことで、体験する側として得たものを共有することや、その内容はどんな視点に立って構成されているか、参加者の何を観察しながら進行しているかなどを議論し、層の様に積み重なって作られているワークショップの内容を解体し、参加者の中にこども向けのワークショップをつくる際のひとつの視点の獲得を目指した。


    (2021年度の様子)

    2022年は2021年度の有門正太郎のつくるこども向けのワークショップを素材に、各自が新たにインストールした基準を更にからだに落とし自分のものへと昇華させていく時間とした。最終的に参加者が実際にこどもを対象にしたプログラムを実施することをゴールにしたが、それは結果的に自分にとっての「表現」を探すための時間となっていった。

  • こどもたちに向けて、自分の何を表現するのか、どんな自分を表現するのか

    この講座が2年目となり「こどもの表現」について様々な議論を重ねていく中で、とても居心地のいいコミュニティが自然に生成されていた。私自身が実感したことでもあるが、この「場」自体がとてもかけがえのない大事な場所に変化していたのだ。

    参加者のひとりが「この時間があるから私は日々に狂わないで生きていける」と言った。

    ここで集い、日々感じたことや違和感など、一般社会では共有しがたいとても繊細で脆く曖昧なものについて、臆することなく遠慮することなく話す。これを議論できる「場」があることで、感覚を鈍らせることを要求される日々からなにかを脱ぎ、「健康で文化的な生活」が送ることができている気さえした。私にとっても、なくなっては困る場所・コミュニティとなっていたこともあって、本講座として有門正太郎さんとの回の他に加え、私自身が発起人となり月にもう一日みんなで集う「場」として、スピンオフの自主ゼミを発足させる。

    そこでは「こどもの表現」についてももちろん話すが、それぞれが生活者として感じたことや日々の違和感などについて安心して吐露することができ、それについてきちんと議論することができた。数年間かけて関係性を作り上げてきた信頼感やこの場やこのコミュニティが好きという共通の思いがあるから、話が通じないのではないか、変だと思われるのではないかという怖さもなく、意見が違うことがあってもだた意見が異なるだけで、その人自体を否定している訳ではない(これは当たり前なのだけれど、案外それが難しいからオトナの社会はめんどくさいのよ・・あ、こどももかもしれないね・・)ときちんと討論することもできた。


    (2022年度の様子)

    そんな本講座とスピンオフで、参加者や私も自分と向き合うことが日常の中で当たり前となってきている。彼らとの交流が当たり前の日常のひとつとなった今、生きることが表現であり、人の数だけ表現があるのだと強く確信した。

    こどもたちに向けて、自分の何を表現するのか、どんな自分を表現するのか。けっこう向き合うことが難儀な問題に、ここに集う大人たちは逃げないで向き合い続けている。って書くと大変そうに思われる気がするけれど、これを皆でするとっても楽しく、日々を生きることがより楽しくなる。だから癖になり、ずー――とこんなことを続けて、この時間が私の当たり前の日常であり続けてほしいと思っている。

    本講座にもスピンオフにも皆がほぼ皆勤賞なのは、私だけでなく参加者全員が同じように思っているからのようだ。

    「こどもの表現」をきっかけに集った私たちは、ちゃっかり流行りのサードプレイズを作り育み、日常はそれぞれの場所でそれぞれの暮らしを生きている。このそれぞれの日々のクオリティがこのコミュニティのお陰で更に上がっている恩返しではないけれど、11月26日と1月7日(2023年)にこんな風に松山ブンカ・ラボさんの講座で存分に楽しませてもらっている大人たちが、本気で作り上げた「こどもに向けたワークショップ」が予定されている。

    大人たちの本気に付き合ってくれるこどもたち、ぜひ来てくれるとうれしいなぁ・・

    いっしょに思いっきり遊ぼう!!!!


    (こどもあそびラボリハーサルの様子)

  • ワークショップ「とぶ・かく・はねる こどもあそびラボ」概要

    ワークショップ「とぶ・かく・はねる こどもあそびラボ」
    日程:2022年11月26日(土)2023年1月7日(土)
    時間:10:30~15:00
    会場:シアターねこ(松山市緑町1-2-1)
    対象:小学生1~6年生
    参加:無料
    定員:10名
    持ち物:飲み物、お昼ごはん、室内履き(上履きかスリッパ等)
    ※汚れても大丈夫な、動きやすい服装でお越しください。
    参加申込み:下記申込フォームにご記入ください。
    http://bit.ly/2QTO4zT

    ——————————

    〔 プログラム 〕
    ・音楽の時間 ・からだの時間 ・絵を描く時間 ・演劇をする時間 ・未来のことを考える時間
    ※11/26と1/7の内容は変わります。
    〔 スタッフ 〕
    ワークショップ企画:こどもの表現を考えるラボ(和泉元守、越智香苗、桐子カヲル、竹内ひとみ、田村祐子、土山あやか、牧野陽子、山本千絵)
    ファシリテーター:有門正太郎(俳優、演出家)
    コーディネーター:阿比留ひろみ(アートコーディネーター)

    ワークショップ とぶ・かく・はねる

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