松山ブンカ・ラボの文化サポートプログラム〈らぼこらぼ〉では、松山市在住の土山あやか(子ども造形アトリエnekko)と、全国で作品やプロジェクトを発表し続けている札幌市在住の深澤孝史(美術家)によるオンラインプロジェクトを実施しています。日本中にある子ども向けの「アトリエ」や「美術教室」は、目的、活動内容、運営方法まで多種多様です。このプロジェクトでは、各地のアトリエや美術教室をオンラインで繋ぐことで新たなネットワークを作り、美術教室に関わる当事者同士、あるいは美術教室に興味のある方との出会いや体験を共有することを目指しています。
今回は小さな美術教室を行き来する廊下のようなオンラインネットワークが生まれるきっかけとなった「とり小屋美術館」に関して記載されている書籍「わたくし美術館」（文化書房博文社、1980年）を紐解き、美術館のみならず美術教室やアートスペースの理念や在り方について考えていきます。

内容
小さな美術教室を行き来する廊下のようなオンラインネットワーク　第6回
「わたくし美術館と美術教室」

対象
・小さな美術教室を運営している方（オンラインも含む）
・小さな美術教室を始めてみたい方
・小さな美術教室に通っている方
・美術教育や制作に興味がある方
※これまでの回に参加していない方もご参加頂けます。

第6回について
第6回目の「小さな美術教室を行き来する廊下のようなオンラインネットワーク」は、「わたくし美術館と美術教室」と題して開催します。
1970年代から尾崎正教により活動が展開された「わたくし美術館」は、独善的な為政者たちの政治的意図に汚染された日本の公共美術館の現状のオルタナティブとして、政治が造るものではなくパルティキュリェール（特定）な「わたくし」の稠密な愛情から発したものとして、本来美術館が持つべき理念の実現を目指した運動です。※1
今回の美術教室ネットワークの動機にもなったとり小屋美術館も、この運動の一つでした。
尾崎自身は「たとえ１坪でも、そこに心からなる展示空間と、心からなる作品が暖かい邂逅を得たとき、真の美術館、つまり『わたくし美術館』がはじまるのだ・・・」という言葉を残しており、それらが現在数多にあるギャラリーや、私設美術館の運動の魁ととなった。そして理念としては現在のオルタナティブアートスペース※2に通じるものがあるこの運動を振り返りながら、自身の目指す美術教室（などの活動）を見つめる機会にしたいと思います。
※ 1『わたくし美術館』序文（長谷川栄 東京国立博物館展示調整室長）より
※2美術館やギャラリーなどの空間、場所ではなく、そうした既存の制度化された空間や場所を相対化するような用途を限定しない「代替可能」なスペース

深澤孝史（美術家）

「わたくし美術館」表紙 （文化書房博文社、1980年）

※文化サポートプログラム〈らぼこらぼ〉とは
松山ブンカ・ラボが企画提案者と業務提携を結び共に催す事業プログラムです。
ワークショップ、公演、展示、講座、調査研究などジャンルを問わず公募し、2020年1月に5団体が採択されました。2020年度は新型コロナウィルスの影響で延期したプログラムがありますが、2021年度も継続して行う予定です。
（採択団体：めぐりて、SCHOP PROJECT、人形浄瑠璃 伊予源之烝、土山あやか、ダンスカンパニー yummydance）