松山ブンカ・ラボ

INTERVIEW

まつやま文化人録

  • VOL.004
  • 2020.03.06 UP
石川誠二 さん
マネキネマ
「観ているお客さんを
後ろから眺めるのが好きなんですね。」

石川誠二さんは会員制の映画上映団体マネキネマを主宰されています。松山はマネキネマをはじめ、シネマルナティックのようなミニシアターもまた健在であり、必ずしもお客さんのたくさん入る商業的な作品ではなく社会的なテーマを扱った映画やドキュメンタリー映画などを松山にいながらにして観ることができるのはとても恵まれています。かつての映画鑑賞団体の活動や精神を引き継ぎ、松山の映画文化を守り育む石川さんにお話を伺いました。

  • 人に観てもらうということ

    もともとは「えひめ映画センター」(以下映画センター)に勤めていました。公共ホールや公民館、学校の体育館など依頼を受けて「非劇場」で映画を上映する企業です。そのうち自分で選んだ映画を上映したくなってきて、映画センターの倉庫に眠っていた、あまり上映する機会のない旧作の16ミリフィルムを観る会を始めたのがマネキネマにつながるわけですが、この映画センターの仕事で「作品を視る眼」は養われたし、いまでも活かされていると思います。というか、今でも個人事業で同じことをやってますが。自分の作品評価と観客の評価は必ずしも一致しなくて、「飯の種」ですから多くの人に観てもらう為には、自分の評価は置いても気になるわけです。自分が観るだけじゃなく、人に観てもらうということで今も作品選びに多様性というか視野に広がりを持たせることはできているかもしれません。
    写真(石川さん近影):松山市役所 文化・ことば課  浦川健太

    私は映画を観たいことよりも「観せたい」というモチベーションが強いんです。上映会で観ているお客さんを後ろから眺めるのが好きなんですね。だから観せる仕掛け、仕組みづくりのことをいつも考えているんです。映画の見られ方も時代で変化があって、マネキネマを始めた頃はまだミニシアターが強くて、マネキネマもいわゆるミニシアター系の作品を上映してきたわけですが、どんどんシネコンができてきて、シネコンでやるのはメジャー系という住み分けがあったけど、今はシネコンも以前だとミニシアターでしかやらなかったような作品もやってますね。でもどちらもほとんどの作品の客席がガラガラなのは(松山の)映画館の日常風景になってます。そして、今は「ミニコン」と言われる座席数が少ない劇場を複数持つ両方の機能がミックスされた映画館が出てきていますが、それだけ小規模で多様なニーズが増えているのかもしれませんね。非劇場もフィルム上映じゃなくなって手軽に開催できるようになって小さな上映会が増えましたし。家庭でもテレビ放送はデジタル化で多チャンネルになったし、DVDやBlu-rayのソフト販売やレンタル、いまはネット配信で観ることもできる。映画館公開から家で鑑賞できるまでの期間がどんどん短くなって、パソコンやスマホでも手軽にみられる。それはそれでいいのだけど、やはりみんなで大きなスクリーンを観ることのよさがあるんです。こんなこと言っても、言葉ではあまり伝わらないので虚しくなることもありますけど。

  • みんなで観る、みんなで対話する豊かさ

    マネキネマは会員制で、「例会」という定例の上映会が主な活動ですが、長年、主にシネマルナティックさんを会場に上映していました。最初は選んだ作品を月1回一週間くらい上映してもらって、非劇場だと普通1日だけの上映ですから、これが映画館でやれることのメリットでした。月一例会の運営は大変だったので半年で隔月にしましたが、当時はいま考えるとお客さん入ってましたね。いまは年4回くらいになっていて、2015年頃からコムズ(松山市男女共同参画推進センター)を会場にすることが定番となっています。会員数は100人くらい。上映するのは、松山で公開されていない作品から選ぶことが多いですが、一度映画館でかけられていたとしても注目されないまま終わってしまった中からこれは観てほしいと思った作品も。私一人の強い意見が通ることもありますけど、最近導入したのは、会員参加で候補作品を絞っていく「サクセン(作品選定)会議」。予告編などを使ってプレゼンをして投票で決めています。こんな形の合議制がほんとにいいかどうかちょっと葛藤はありますが。以前は評判だけで決めていたこともあったけど、事前に観ることは大切ですね。気になる作品は県外へ観に行ったり、フィルム時代は難しかったサンプルを送ってもらって運営委員で観たりしてます。

    最近では座席の配置や鑑賞のスタイルを工夫しています。今使っているのは公共施設の会議室だけど場内で飲食ができるので普通はスクール形式で前に長机が並んでるのを座席の横に長机を挟んで並べ直して、出店者に食べ物や飲み物を販売してもらって、対話をつくっていくことを心がけています。観終った後、みんなで集まって話すと「そういう見方もあるのか」と気付くことがあるんですね。自分が「いまいちだな」と思った作品でも、よかったと言う人から感想を聞くのは面白いものです。逆も然りだけど。それでもう一回観直してみるとよいときもあるんですね。やっぱりよくないときもありますが(笑)。でもその方が、映画の観方として豊かですよね。経験や年齢によって映画の見え方も変わってくるんですよね。それを知るだけでもいいんじゃないかと。
    配置に工夫を凝らした松山市男女共同参画センターでの上映会

  • 子ども、制度の外側の場所づくり

    近頃は「子ども」を意識しています。7年前に息子が生まれた直後は、幼児同伴できる上映会をやりましたし、ツインクルプランさんと一緒に企画してやっている「キラキラこども映画館」は、子どもたちが試写を観て、上映会に向けて手作りチラシをつくったりと宣伝に関わって、上映会当日はスタッフとしてお客さんを迎えるワークショップです。映画体験にもなるし、自分の感じたことを言葉にして他人に伝える機会にもなります。子どもの権利をテーマにした「まつやまこども映画祭」というのもやりましたし、先日かかわった愛媛国際映画祭には、大人は手出し口出ししない映画制作ワークショップ「こども映画教室」を招致しました。私は学校が嫌いでしたから、学校だけではない制度の外側の場所作りは意識しています。
    松山市中心市街地賑わい再生社会実験の場であった「みんなの広場」での上映会(2018年)
    「まつやまこども映画祭」にて登壇する石川さん

    映画センター時代には、大きなホールの客席を埋めたこともありましたし、マネキネマでも2日で3,000人という動員記録もあります。それはメジャーの大ヒット作ではない映画です。映画館よりも非劇場の自主上映の方が集客することがあるんです。もちろん様々な要素がないとできませんけど。そんな経験から考えるのは、観客は観客を呼べるということです。観るだけではなくて、私のように観せたい、共有したいと思う人が増えれば、マネキネマのような上映会は継続できると思っています。

(取材:2019年12月11日)

マネキネマ

「映画をスクリーンで観る」ことをモットーにした、会員制の映画鑑賞団体。会員数は約100人。定例で自主上映会を実施。松山で公開されていない作品や上映機会が限られていた作品を積極的に上映。

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