松山ブンカ・ラボ

JOURNAL

特集記事

2020.07.17 UP
VOL.
015
report
今、地方都市・松山の文化・芸術は?②~文化庁「文化芸術活動の継続支援事業」

戸舘正史(松山ブンカ・ラボ ディレクター)

  • パブリックな視点が行政以上に求められる市民

    今回は、現在募集中の最新の文化庁による文化芸術活動に対して補助金を支給をする事業(「文化芸術活動の継続支援事業」)についてお知らせします。

    先日、愛媛のメディアがこのようなニュースを伝えていました。
    「新型コロナ対策市民団体が松山市に芸能文化の支援要望(愛媛新聞2020年5月29日)

    この要望の内容については記事に詳細を譲りますが、文化芸術が産業として、ある一定の割合で定着していない地方都市においては、文化芸術分野に特化した支援策は、残念ながら自治体行政が取り組むべき政策の優先順位として高いものではありません。しかしこのように松山においても一部の文化芸術関係者が行政に対して補償や支援を求める動きがあるのは理解できるものです。一方で、困っているひとたちは文化芸術関係者だけはないことは言うまでもありません。経済的損失の補償を、文化芸術独自の支援策でやるのか、他の産業や個人事業主全般に対する支援策のなかでやるのかは、その地域において文化芸術分野が産業構造全般のなかにどの程度の割合を占めているかに拠るところが大きいと言えるでしょう。

    また、独自の経済のメカニズムを持っている文化芸術分野はどこからどこまでなのか?といった点は、地方都市に限らず国の支援策等においても孕んでいる難しい問題です。「芸能文化」や「文化芸術」という括りの中には、件の文化活動が生業となっているのか(プロであるのか)、趣味や愛好の域を出ないものであるのか(アマチュアであるのか)、その間なのか(セミプロであるのか)、実演団体なのか、鑑賞団体なのか、など様々な立ち位置が内包されています。ですから行政にとっても、文化芸術分野の支援策を講じるには精緻な設計と根拠が必要ですし、何よりも文化芸術の公益性あるいは公共性を理解していることが求められます。要望する市民側もまた、地域の文化芸術分野の産業構造の実態把握が求められますし、自分たちの既得権益の死守とは異なる文化政策的な見地からのパブリックな視点が、ある意味、行政以上に求められています。

    松山市役所庁舎名物の垂れ幕

  • 文化庁「文化芸術活動の継続支援事業」

    今回の文化庁の支援事業は、フリーランスも含め広く文化芸術分野を対象としているもので、使い勝手は決して悪いものではありません。むしろ、文化庁はまあまあ頑張ったと思います。松山の「芸能文化」支援を要望する市民団体もこうした補助金に申請し、採択されるという経験を積むことが、パブリックな視点を獲得するチャンスになるのではないでしょうか。

    ➡文化庁「文化芸術活動の継続支援事業

    この支援事業は、政府の第2次補正予算によって計上された「文化芸術活動への緊急総合支援パッケージ」(560億円)に盛り込まれたもので、フリーランスのアーティスト、文化芸術関係者、小規模の団体を対象にした補助金です。この補助金を申請するにあたっての大前提の条件としては「不特定多数を対象に公開して収入を得るもの」「新型コロナウィルス感染拡大によって大きな影響を受けていること」が挙げられています。

    補助は以下の4つに分かれています。ものすごくザックリ、簡単に説明します。詳細は必ず文化庁のHPにある募集案内をあたってください。

    Ⅰ「技能向上等支援A-①」
    フリーのアーティストも制作者や技術者も、もろもろ「技能向上等」にかかわる目的があれば活動費を上限20万円支援してくれるものです。もろもろ「技能向上等」とは、「観客の開拓」、「公演や活動のための検討、準備、実施」「経営カバナンスの近代化」などで、加えて「新型コロナウィルス感染拡大予防ガイドラインに即した取組み」には定額10万円が支給されます。この「A-①」が最も申請しやすく採択されやすいものでしょう。

    Ⅱ「技能向上等支援A-②」
    こちらはより「積極的な取組み」を行う人たち向けです。「A-①」の条件に加えて、感染症対策、動画配信等で、「積極的」に何か工夫して試みを企てた場合、上限150万円支援してくれます。ちなみにⅠ「A-①」とこのⅡ「A-②」の両方を申請することはできません。

    Ⅲ「技能向上等支援B」
    フリー等の個人事業者ではなくて、小規模団体(おおむね20人以下)向けのものです。法人格を持っている必要はないですが1年以上の活動実績が必要です。新たな公演の制作、企画等に関わる活動費を上限150万円支援してくれます。動画配信や広報媒体、練習にかかわる経費も対象となるそうです。

    Ⅳ「共同申請」
    小規模団体が主体となって、複数のフリーの個人事業者等と共同して公演開催に向けた取り組みに関わる経費を上限1500万円支援するものです。

    以上のように、一見すると、舞台芸術分野に限っているようにも思えますが、そんなことはありません。美術分野も対象となります。例えば「公演」は展覧会やアートプロジェクト等と読み替えればよいだけです。
    (さらに重要な点は、「公演」や「展覧会」のような成果的なアウトプットだけが対象ではないということです。※7/20加筆)。

    またフリーランスの方は、各芸術分野の「統括団体」を通して「確認番号」を発行してもらうことで、より簡単に手続きを行えます。各芸術分野における「統括団体」については公益社団法人日本芸能実演家団体協議会HPに詳しいリストがあります。

    この文化庁の補助金は当然ながら松山で活動する文化芸術団体、劇団、ダンサー、ミュージシャン、実演家、美術家、制作者、技術スタッフ等も申請できます。コロナ禍における経済的損失をダイレクトに補てんするものではありませんが、今後も続く困難な状況下において文化芸術活動を継続していくためにも、ぜひ活用してほしいものです。

    募集は第1次~3次までありますが、第3次募集は行われない場合があるようですから早めの申請をおすすめします(募集期間:第1次/7月10日~7月31日、第2次/8月8日~8月28日、第3次/9月12日~9月30日)。

    文化庁では問い合わせを受け付けています。
    文化庁 コールセンター 0120-620-147 へ【10:30~17:00(・祝日も対応しています)】

    松山ブンカ・ラボでも相談をお受けいたします。
    bunkamatsuyama@gmail.com / 070-3795-5403

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