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- report
- まちと文化とアートの学校2019 レポート①
~ まちと文化
戸舘正史(松山ブンカ・ラボ ディレクター)
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まちとアートプロジェクト(土谷享氏/6月22日)
アートユニット・KOSUGE1-16の土谷享さんの手がけるプロジェクトは、まちが抱えている制約(既存の制度や人間関係など)と向き合いながら、新しい関係性を紡ぎ、さまざまな角度からアクションが生み出されていくなものでした。わたしたち自身が、あるいは、わたし自身が、価値をつくり、引き継いでいくアートプロジェクトのカタチと言ってよいものかもしれません。
土谷さんが車田智志乃さんと一緒に活動されているKOSUGE1-16は、かつて東京都足立区小菅で暮らしていました。そこには下町ならではなの「持ちつ持たれつ」のコミュニティがあったそうです。ときには少々お節介がありなつつも、互いに助け合いながら共に暮らしていった経験から、土谷さんの活動は人と人とのつながりを誘発しながら関係性を紡いでいく方向性へと定まっていたようです。土谷さんの手がけるプロジェクトには、自らがアーティストとして設定した入り口をきっかけにして、そこに入ってきた人たちの抱えている知恵や技術、ネットワークなどが折り重なってプロジェクトが自走していくというダイナミックなふり幅があります。例えば、《どんどこ!巨大紙相撲》では、地域コミュニティのなかで子どもも商売をしている人もさまざまな立場にある人たちが参加することによって、既存の関係性に新しい関係性が足されていきます。あるいは、名古屋長者町での《長者町山車プロジェクト》では山車を引くお祭りをもっていない地域で山車文化を作り今や地域の人たちによって毎年恒例の行事として定着しています。いずれも、アーティストの手からプロジェクトが離れて自走しているわけです。
松山ブンカ・ラボでは土谷さんをお招きして《松山リサーチプロジェクト》をスタートします。すでに見聞きした地域の歴史、文化、記憶ではなく、私たちにとって大切なまだ見ぬ価値を共に探っていく、市民参加型のプロジェクトです。未来の誰かに受け渡すことのできるプロジェクトを一緒に作りませんか?参加者は随時募集中です。
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まちを再発見する方法(尾崎信氏/7月20日)
前回の土谷享さんからの問題提起「有用であることが価値なのか?」という視点を敷衍しながら「有用であることは何か?」という切り口で、まちづくり、都市整備、被災地復興計画の事例を引き、さまざまな問いを私たちに投げ掛けてくれました。まちづくりにおいても、視点の多様性を担保すること、関わりの余白を設定することの大切さなど、いま私たちの生きる社会に必要な「寛容」のあり方について考える機会となりました。
尾崎さんは葛飾北斎と歌川広重の浮世絵を例に複眼的な視点について説明をされました。いずれの浮世絵も萬年橋を描いています。北斎は俯瞰して橋を行き交う人たちを描きます。一方で広重は橋の柵の内からの構図で、紐で吊るされた亀に焦点が当たり、その向こうには帆船と富士山が見えています。尾崎さんは、この広重の視点は子どもの目線であり、さらに生き物を放つ寺社の習慣「放生会」の文化が背景にあったことを指摘します。にぎわう街を構想していく際に、多様な視点を持つための想像する力と共に、その地に根付く文化を織り込んでいく眼差しの重要性を説明するところに、尾崎さんの考える「まちづくりの思想」が垣間見れます。
脈々と続く人の暮らしと他者の視点を想像することは、尾崎さんがかつて従事された被災地の復興においても大切な視点です。文化の視点から、被災されたまちの復興や被災者の悲しみについての考察は、次回からの「被災と文化」(9/28 《かなしみを綴ること》10/19《文化に何ができるか、震災後の東北で始まっていること》)への橋渡しとなりました。
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